『原発事故と「食」』とわしと社会
今日も今日とて暇を見つけてはこの前の暴風で吹っ飛んだトンネルの復旧作業をしとったんよ。来週から温うなるかと思えば霜ピンチが3日連続やきんな。風の通り道で支柱やマルチまで吹っ飛んだスイートコーンには不織布かけてあるだけなんやけど今朝の霜キツかったな。さあ、あと2日、どれくらい生き残るかねえ。
この風ほんまいろんなもん飛ばしたり破いたりしてヒドいんやけど、ひとつええこともした。見るたびにビミョーな気持ちになってた産直市の幟を飛ばしてくれた。こんなん。
「地元香川県産だから 安心安全」
これなあ、そしたら裏を返せば香川県産以外は不安or危険なんかっちゅうことにならんかえ。わしは産直だけでなしに県外の市場向けもやっりょるけど、特に作業に区別をつけるわけもない。
それは意地悪な見方としてもやな、そういう根拠のない身内びいき、あるいは顔が見えるから安心(面が割れてたら悪いことでけへんやろ)みたいなんはやっぱりすかんのよ。結局は不信が原則で、信頼は例外って言うわけやんか。
そうやってビミョーとかすかんとか言うてちょっと気晴らしできるんは平時だからであって、なんらかのきっかけで牙を剥いた不信はほんま恐ろしい。食べものを通して見る東京電力福島第一原子力発電所の事故とはそういうものやった。そしてそれはまだ続いとる。
原発事故と「食」 - 市場・コミュニケーション・差別 (中公新書)
- 作者: 五十嵐泰正
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原発事故後の品目ごとの福島県の農水産物の価格決定メカニズムを丁寧に解き明かす。もつれた糸をほどくためのサイエンスコミュニケーション/リスクコミュニケーション/レギュラトリーサイエンス/社会心理学の実践の数々。わしも今年こそ「かめむしラボ」やろう。著者も深く関わった柏市の実践は、「地元だから安心安全」がくるっとひっくり返った話やきんな。あの幟作った人にはいっぺんちゃんと読んでもらいたいわ。
みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年
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それでも最後に残るこの社会の不特定多数に対する信頼の低さ。すぐに内輪とそれ以外に線を引き、内はべったり安心し、外にはナンダオマエハ。そういうのがはっきり現れるのがSNS上の分断でもあり。決して論点を切り分けて議論することなく、反、反反、反反反、反反反反の無限地獄。代理戦争はしちゃいけない。わしがそれにはっきり気づいたのは、上の子がまだベビーカーに乗っていた頃、電車内のベビーカーの扱いについて口汚く罵り合うあんまし関係のなさげな人たちを見たときかな。当事者性うんぬんもあるけど、けんかをやめて〜ふたりを止めて〜味もある。p200〜201の宿題受け取りました。
わしって、カメムシの同定は熱心にしても人の顔と名前一致させる気ゼロ、コミュニケーション苦手、特に人の輪に入るの苦手やきん、そういう社会正直つらいんよ。その点、お互いに名前も所属も知ろうともせず、違う車券を持ちながら目の前のレースにあーだこーだ盛り上がれる競輪場しゅき。そんなわけで山岸俊男さんの信頼研究とか、そこから発展させて近代の倫理を再構築しようとする松尾匡さんの議論なんかを精出して読みよるわけなんやけど、これからもずっと自分の食い扶持とも掛け合わせながらそういうことを考え続けていくんやろうなということを再確認させてもろたのでした。